「……おい、カノカ」
「っ……?」
「少しずつ後ろに下がれ。絶対に音を立てるなよ、死にたくなけれゃ慎重にな」
間近にいるあたしだけに聞こえる声でそう言った恭也の言葉に、小さく頷いてじりじりと後ずさる。
こんな海に囲まれた孤島に熊がいるって、ここの環境基準どうなってるの!?
心の中でそんな泣き言を叫びながら、あたしはゆっくりと律くんの後ろまで下がる。
「……律くん?」
その場から全く動こうとせず、ただ黙って熊を見つめる律くんにあたしは戸惑いながら声をかけた。
「……恭也、どけ」
「……あぁ?」
至って冷静沈着な律くんに、恭也がよりにもよってすごみ声で振り返る。
ひぃぃぃぃ!
こんなところで、喧嘩してる場合じゃないでしょ!?



