お察しの通り、風邪をひいた。
一学期の間どれだけ風邪をひいたら気が済むんだ、とマオに言われた。
それは朝お母さんに言われたばかり。
「明日来れんの? てかうつさないでよね、僕の成績が落ちたらどうすんの」
「試験が午前中だけで助かった……」
「良いから早く帰りなよ」
マスクをしながらふらつくあたしを見て、流石のマオも憐れんだ目を向けてくる。
試験を受けないと必然的に0点とみなされて、期末試験が辛くなるのは目に見えている。
あたしはただでさえ文系科目が苦手なのに!
ゆっくり靴箱に向かっていると、視線を感じた。
「硝子」
……何故名前呼びなのか。
問いただしたい気持ちは山々だけれど、あたしは軽く手を上げてその場を去りたかった。