サヨナラも言わずに


それなのに、どうやって聞くっつーんだよ。



「美琴、起きろ。篠宮旭が目の前にいるぞ」



母さんはまぶたを閉じている沢田の耳元で、そう言った。



なるほど、篠宮旭作戦を決行したわけか。



すると、指先が動き、沢田はゆっくりと目を開いた。



おわ、マジか……


ホントに篠宮旭って聞いただけで起きたんだけど……



なんか、奇跡見た気分。



「あれ、弥生ちゃん……?」


「よ、美琴。久しぶりだなー」



体を起こした沢田は母さんを見つけ、不思議そうな顔をした。


まあ、そうなるよな。



「とりあえず、先生呼んで」



母さんがそう言うと、里穂さんが真っ先に病室を出た。



そして、先生がいろいろ検査をし、異常なしだと判断した。



「で……美琴。なんで自殺なんかしようとしたんだ」


「だって……どこにも私の味方がいなかったんだもん。それに、生きる理由もなかったし」



沢田は母さんの質問に、小さな声で答える。



「里穂を見てみろ」



沢田は素直に里穂さんを見る。


すると、みるみる目に涙を溜めていく。



「ごめんなさい……ごめんなさい、お母さん……」