サヨナラも言わずに


「旭!」


「わーったよ、今行く!」



俺は納得のいかないまま、病室をあとにした。



まだ沢田といたかったってのに。



「少しは里穂のことも考えなさい」



母さんは歩きながら言った。



「……どういう意味だよ」


「里穂は多分、満足に子育てができてなかったはず。今こそ、やりたいようにやらせるべきだ。そして親としての役割を果たせるチャンス。あんたはそれを、潰す気か?」



……なるほど。



だからバカ息子か。


確かに母さんの言う通りだな。



親子の絆が試される今、無関係の俺が割り入るわけにはいかねぇってことだろ。



「一週間お預けか……」


「なに、そんなに美琴といたいわけ?」



しまった。


口に出してた。



「うっせー、からかうな」


「はいはい。まあ、今は我慢の連続だろうな」



そうさせてんのは誰だよ。


いや、母さんの言うことも正しいけどさ。


だからってわざわざ言うなっての。