サヨナラも言わずに


「あのころは旭に復讐したい、という一心だったよ」


「なんか知ってんのか……!?」



つい母さんの言葉に、過剰に反応してしまった。



「ああ、あたしに全部話してくれた。なんで旭を恨んでるのか、男性恐怖症になったのか。それを聞いたときは信じられなかったよ。信じがたいできごとだったからね」



母さんはそう言いながら、そっと沢田の頭をなでた。


さっきとは違う、優しい目をして。



「弥生先輩は、心当たりありますか……?どうして美琴が死のうとしたのか……」



里穂さんの心の中ではきっと激しい葛藤が行われていることだろう。


真実を知るべきなのに、知りたくない、と。



「……ないわけじゃあない。でも……」



母さんはそこまで言ってうつむいた。


素直に話すべきか、戸惑っているのだろう。



「お願いします、聞かせてください」



しかしどうやら里穂さんは、覚悟を決めたようだ。


顔つきが母親らしい顔になっている。



それを見た母さんは、少しずつ話し始めた。