サヨナラも言わずに


にしても、どうしてさっき言わなかった?


名前聞いただけで、なんとなく予想できるだろ。



まあ、ババアには無理だってことか。



「旭、キサマ今なに考えた」


「なにも」



下手に言えば、たとえ病院であろうと、俺はこのババアに殺される。


となれば、黙ってシラを切るのが正解だろう。



「にしても……美琴が自殺、か……」



その意味深な言葉がやけに引っかかる。


それなのに、俺はなにも口出しできなかった。


今口を開けば、自分でもなにを口走るかわかったもんじゃない。



「まさか、中学時代に美琴がお世話になったのが弥生先輩だったなんて……。ありがとうございました」


「今礼なんか言っても意味無いよ。あたしは美琴の力になれなかった。その証拠が、これだ」



ババアは目を伏せ、ただ黙って美琴の顔を見つめた。


つられるかのように、俺たちも見る。



「……美琴はやっぱり、なにか悩みを抱えてたんでしょうか……」


ポツリとつぶやいた里穂さん。


沢田に頼られなかったことがかなり辛いのだろう。


声がだいぶ小さい。