サヨナラも言わずに


そういえば、そういうことも言っていたような気がする。



興味がなくて聞き流したか。



「そっかぁ……弥生先輩の子だったんだね。弥生先輩、元気?」


「四十五のババアとは思えないくらい元気です」



すると、彼女は思いっきり笑った。



初めて見た彼女の笑顔は、昔見た沢田の笑顔にそっくりだった。



「もしあれだったら、今呼びましょうか?」


「いいの?」



俺は立ち上がりながらうなずき、部屋を出た。



外に出て親に電話をかける。



『なに』



数秒後に出た母さんの声は、機嫌が悪そうに聞こえた。



「今さ、友達のお見舞いに来てんだよね。その友達の親が母さんの後輩らしくてさ。今から来れない?」


『なんであたしが』



そう言うと思ったよ、クソババア。



「とにかく、来れるか来れないか、どっち」


『……あの病院でいいのよね?』


「ああ」



この口ぶり……


来れるということだろう。



『入り口で待ってて』



その言葉と同時に、電話は切れた。