サヨナラも言わずに


「……っ!?」



その沢田の顔を見た若宮は、目を丸めていた。



「どうかしましたか……?」



それに気付いた彼女は、若宮に聞いた。


俺も若宮のほうを見る。



「い、いえ……なんでも……」



どう見ても、なにもないとは思えない。



こいつはなにかを隠している。


俺たちに言えない、なにかを。



だが、若宮がなにもないと言った以上、特に深入りしなかった。



「ぼ、僕、帰りますね。早く目を覚ますこと、祈ってます。黒瀬くん、また明日」



まだ動揺していたが、若宮はそのまま帰っていった。



あいつ、何しに来たんだ……?



「黒瀬くん。少し美琴のこと見ててもらえる?私、飲み物買ってくるから」



彼女はそう言いながら、立ち上がった。



「わかりました」



俺の返事を聞いた彼女は少し微笑み、病室を出ていった。



一人になった俺は意味なく沢田の頭をなでた。


「沢田……ちゃんと聞いてほしいことがあるからさ、早く目ぇ覚ましてくれよ……」



ほとんど毎日同じことを言っているが、なんら変わりない。