サヨナラも言わずに



「さ、着いたよ」



あれから若宮はなにも聞いてこなかった。


俺としては助かったけど。



「黒瀬くん?」


「あ、今行く」



俺はシートベルトを外し、車から降りた。



「沢田さんの病室は?」



あ、そっか。


若宮は初めてなんだっけ、お見舞い。



ま、案内する気はさらさらないけど。



俺は黙って、いつも通りに沢田の病室に向かう。


若宮はその後をついて来ていた。



俺はもう見慣れてきた病室に、足を踏み入れる。



「あら、黒瀬くんと……?」



沢田の眠る横には、日に日に弱っていってく沢田の母親がいた。



沢田のことが心配なのはわかるが、ここまでくると、彼女のほうが心配になってくる。