サヨナラも言わずに


鏡の前には、見たことのない人が写っていた。



「それでは、メイクしていきますね」



次から次に……


仕事が早いなって感心する。



「もとがいいから、ホントに少しだけど……
どうでしょう」



美容師さんはタオルとかを取りながら、聞いてきた。



わー……


誰ですか、これは。



「彼氏さんも」



……人の口から彼氏って聞くと、妙に恥ずかしいや。



「ん、いんじゃね?」



……感想少なくね?



あんたが注文したんでしょ。


もっとそれらしい感想言ってくれてもよくない?



「あまりにも可愛いから、彼氏さん、照れてるんですよ」



多分、不服そうな顔してたんだろうね、私。


美容師さんがフォローするかのように、耳元で言ってくれた。



黒瀬が照れてる、ねぇ……