サヨナラも言わずに


って、そりゃないか。



「かしこまりました」



美容師さん、なんか楽しそう。


この仕事が好きなんだね。


顔見るだけでもわかる。



「どうして前髪を伸ばしていたんですか?」



会話、しなきゃダメですか。



あ、暇つぶしみたいなやつか。



「顔、隠したくて……」


「えぇ!?可愛い顔を隠すなんて、もったいないですよ!」



なるほど、可愛いって言ったのは、私の顔のことね。



お世辞もいいとこじゃん。



「可愛いなんて、とんでもない。昔はよくブスだって言われてたんですから」


「みんな羨ましかったんですよ、きっと」



いえいえ、言ってたのは男子です。



なんて言わないけどさ。


なるべく会話したくないから。



私がなにも言わなくなると、美容師さんは黙々と集中して切り始めた。



「こんなもんかな……どうですか?」


十分後くらいに、そう言われた。


「これ……私……?」