サヨナラも言わずに


「いらっしゃいませ。ご予約されてますでしょうか?」



予約?


そんなのが必要なの?



「はい、黒瀬です」



なっ……!


いつの間に!?



私が戸惑ってるのをよそに、黒瀬は紳士っぽく美しい美容師さんに言った。


彼女が頬をわずかに赤らめたのは、おおかた、黒瀬に見とれたのかな。


てか、ほかの美容師さんたち、手が止まってる。



チラチラと黒瀬を盗み見て。


ハサミを持つ職業の人たちが、そんなのでいいわけないのに。


なんか、不安になる。



「黒瀬様ですね。どのような髪型にされますか?」


「あ、すいません。切るのはこの子です」



黒瀬はそう言って、私を美容師さんの目の前に。



ぎゃあー……


睨まれてるような気がするのは、気のせいじゃないですよね。



「妹さんですか?」



いや、あの。


わりと身長は高いほうだと思っているんだけど。



てか、あなたよりも高いよね?


なんでそんなふうに言われないといけないわけ?