サヨナラも言わずに


「美琴、着いたよ」



こうやって黒瀬に名前呼ばれるだけで、ドキドキする。


ずっと、呼ばれたいって……



なんでもない。


今の、なかったことにする。



あんなこと考えるなんて、きっと気のせいだから。



「美琴?どうかした?」



気付けば黒瀬の顔が目の前に。


顔の温度が徐々に上がってくことが、なんとなくわかる。



「なんでもない。入ろ、旭」



そう言って足を踏み入れようとしたのはいいものの、なんか大きいんだけど。


いつも来るとこじゃないから、妙な緊張が……



だからといって、ここで引き返せるわけないし。


よし、行こう。



カランカランと音を立てるドアを押し、私は中に入った。



さすがというか、やはりというか。


内装はとてつもなくオシャレだ。


美容師さんもみんな、オシャレ。


なんだか、私の髪型とか服装、すごい浮いてる感じがして、恥ずかしい。