サヨナラも言わずに



【美琴side】



次の日の、朝十時になってしまった。



……行きたくない。


昨日黒瀬に告白したとこまでは、よかったのに。


どうしてデートみたいなこと、しないといけないの。



おまけに、前髪切るって……


絶対にイヤ。



なんでOKしたの、昨日の私。



「美琴ーっ!旭くんが来たよー」



……もう逃げられないじゃん。



私は重たい足取りで部屋を出た。



「行ってきます」



演じなきゃ。


黒瀬のことが好きな、黒瀬の彼女を。



「楽しんできてね」



素でそう言うから、お母さんはタチが悪い。



作戦だって、知ってるくせに。


でも、それを抜きで私が楽しめるって思ってるんだろうな。



軽く頷いた私は、ドアを開け、外に出た。



「髪切ったあとさ、映画観に行かね?大樹さんに映画のチケットもらったんだ」



……興味ない。


ただでさえ、黒瀬と出かけるのが憂うつなのに。



「うん、行こう」