fairy3 空の物語 上

「何か、思い出でもあるんですか?」

「そうねぇ、あまりはっきりとは覚えていないけど、その名前を聞くと心が暖かくなるの」

望美は、タンスの上に乗っている家族三人が写った写真に目を向けた。

「私ね、高校生の時に酷い事故に巻き込まれたことがあるの」

「そう、ですか」

「その時、酷く重体だったみたいで、私の夫の奈津はお医者さんに厳しいことを言われたの」

やっぱり、あの時のことは覚えていないみたいだ。

それならそれでーー

「真紅の光」

「っ!」

その言葉を聞いた俺は、下げていた顔を上げ望美と目を合わせた。

「真っ暗な暗闇の中に居た時、真紅の光が道を照らしてくれた」

「……っ」

そこまで、はっきり覚えているものなのか?

確かに、俺はシンクの力を使って望美に道を示した。

でも、俺は確かに望美の記憶から、あの時の記憶も消去したはずだ。