fairy3 空の物語 上

「あれ?葭月(かげつ)はどうした?」

先生の言葉に、みんなは優空君の席に目を向けた。

そこは空席になっていて、鞄もかかっていなかった。

「休みなんて珍しいね」

「うん、優空が休むなんてこと今までなかったのにどうしたのかな?」

私と愛斗は小声で話した。

「休みかな?じゃあ、早速──」

先生がチョークを持ったと同時に、教室の扉が勢いよく開けられた。

クラスのみんなは、一斉にそちらに振り向く。

そこには、息を切らした優空君が立っていて息を整えていたところだった。

「おはよう葭月、もしかして寝坊か?」

「……まぁ、そんなところです」

優空君は、何もなかったように教室の扉を閉めて、自分の席についた。

「さ、さすが優空……」

「う、うん」

でも、遅れてきたのは珍しい。

私と違って寝坊なんてことはないと思うけど?

私は、チラッと優空君を見る。

優空君は、私の視線に気づいたのか窓の外を向いてしまった。

やっぱり、無愛想だ。

彼は、葭月優空(かげつゆう)君と言って、あの有名なアイドル、東雲刹奈(しののめせつな)さんの息子さんなんだ。

本人は、アイドルとかそういう仕事には興味ないって前に言っていた。

顔はお母さん譲りで整ってるし、髪はさらさらだし、肌は男の子なのに色白。

そして、なによりクールだった。

それはもちろん、周りの女の子が見逃すはずがないんだけど、優空君は人と居るのが嫌みたいでいつも一人でいる。

女の子からの告白も、全部断ってるみたい。

私は、頬を染めてノートに落書きをする。

そして、私は優空君に密かに好意を寄せていた。

きっかけは些細なことだったけど、それでも彼を好きになるには十分だった。

この気持ちを知っているのは、沙羅と未来だけ。

愛斗や奏佑に相談したら、何を言われるか分からないし、一葵なんて絶対馬鹿にしてくる。

だって、一葵と優空君の仲は凄く最悪だから。

「優空だけはやめとけ!」

とか言い出しそう。