fairy3 空の物語 上

すると、俺の声に反応したのか、黒く染まりきったキセキの泉が渦を巻き始めた。

さらに強風も吹き始め、強風に体が持っていかれそうになる。

キセキの泉の上に真っ黒なボールのような塊が現れた。

「……お出ましだ」

『ひ、ひぇぇ……』

中からの風圧により、真っ黒な塊は辺りに弾け飛んだ。

その時、俺の体に鳥肌が立ったと同時に、目の前にいる人物はゆっくりと俺に振り返った。

『……』

「……あんただろ?俺をわざと過去に飛ばしたのは、無の妖精リヤン!」

『……』

女の子は、キセキの泉の上に下り立つ。

「何も答えないのか?」

『き、奇跡……』

シンクは、俺の後ろでカタカタと震えている。

でも、それは仕方のないことだ。

目の前にいるやつは、アクよりも危険な人物なのだから。

『私がここにいること、よく分かったね?』

「あんたは、一回雪菜とリンクした。しかし、わずかな時間しかリンクできず、あんたが雪菜の体から離れた時、泉が揺れるのを見たんだよ」

『たったそれだけの事なのに、さすが未来の守護妖精を持つ持ち主ね』

リヤンの素顔は見えない。

それは、白い布で顔を覆っているからだ。

何故顔を隠すように白い布を付けているのかって?

そんなもの、理由なんてたった一つだ。

それは、リヤンと目を合わせてはいけないからだ。

リヤンと目を合わせたら最後、リヤンの力によってこの世から存在を消されてしまう。

存在と共に、自分が存在したと証明するものすら、彼女は無かったことに出来るんだ。

『それで、あなたが聞きたいことってなに?』

「まず、なんで俺たちをわざと過去に送るような真似をした?」

『そんなの簡単なことよ』

「は?」

『“私”という存在を作り出すため』

リヤンの言葉に俺は目を丸くした。

シンクも驚いたのか、口をぽかんとを開いている。

「お前は、未来で起こることの全てを知っているのか?」

『そんなの知らないわよ』

「じゃぁ、どうして俺が過去に行くって分かった?」

『ずっと見ていたから』

「見ていた?」

リヤンは、下にあるキセキの泉に指をさした。

『この泉の中で、あなたの行動を全て見させてもらっていたのよ』

「なっ!」

『そんなのどうやって?!だって、この泉に落ちたら二度と出て来れないんだよ!』

『私をなんだと思っているの?』

リヤンは首を傾げた。

リヤンからしたら、キセキの泉の力など全て無効化されるに決まっている。

なら、泉の中で生きることだって……。

『私は、無の妖精よ。誰一人として、私を傷つけることも出来ないし、破壊することは出来ない』

『そんな……、化け物じゃない』

『化け物よ私は。アクを倒す存在として、あなたがヴィーナスに作らせたんだから』

「確かにヴィーナスは、未来に向けた準備を始めると言っていた。だけど、俺はお前みたいな妖精を作れとは言っていないぞ!」

『……』

リヤンは、一瞬にして俺との距離を縮めた。