fairy3 空の物語 上

【愛斗】

「……」

僕は,雪菜に見えないように拳に力を込めた。

『いいのか、本当のこと言わなくて』

ソレイユが僕の耳にそっと耳打ちする。

「……言えるわけないよ」

優空の幼馴染の子が女の子だなんてこと……。

いつも、放課後になると姿を消す優空は、幼馴染の女の子がいる病院に毎日通っていたんだ。

優空からは、まだ詳しく聞いていないけど、女の子のことを話している時の優空の表情は、とても優しかった。

きっと、優空はその子のことが好きで、その女の子もきっと、優空が好きだと思う。

「僕……、どうすればいいのかな?」

本当のことを言えなかったのは、雪菜が傷つくと思ったからだ。

だって雪菜は、今日優空に告白する。

さっきの話しがあるってことは、そういうことなんだと僕は理解していた。

でも僕の中では、微かに思っていることがあった。

……いや、ホッとしたのかな?

優空に好きな人がいてよかったってーー

これなら、雪菜が告白しても優空は断るしかないし、そうしたら雪菜は、優空を諦めるしかない。

皮肉なことに僕は、そう思ったんだ。

「ほんと……、嫌な男だな僕は……」

こんなことを思う僕が、雪菜の一番になる資格なんてない。

なんで……、僕が望む方向に恋愛は進んでくれないんだろう?

雪菜と優空が付き合うことになれば、僕の気持ちは自然と風化していくと思っていたのに……。

雪菜のことを諦めて、他に好きな人でも出来ると思っていたのに……。

これじゃあ、気持ちを捨てることなんて出来るはずがない。