fairy3 空の物語 上

そういえば、お母さんの額にうっすらと傷跡が残っていたのを私は思い出した。

それがきっと、交通事故で負って残ってしまった傷なのだろう。

「私は意識が戻らなくて、奈津は医師に覚悟をしてくださいって言われたの」

「お父さん、凄く悲しかったよね?」

「うん……。今もその事を思い出すと胸が苦しくなるの」

お母さんもお父さんも、いろんなことを経験してきて、それらを乗り越えて今があるんだ。

だから、お父さんは私たち子供にいろんなことを体験したり、経験してほしいって思ってるのかな?

「私は真っ暗な世界にいて、もう二度と光のある世界には戻れないって思った。でも、温かい光が私の道を照らしてくれた」

「温かい光?」

「真紅の光よ」

真紅の光?

「その光のおかげで、私は意識を取り戻すことが出来た」

「それで、ちゃんと伝えたんだね」

「うん。だから、気持ちは伝えないとちゃんと伝わらない」

お母さんの言葉で私の中で、優空君の姿が浮かび上がっていた。

もし、優空君に私の気持ちを伝えたら、優空君は何て言ってくれるかな?

「ただいまー」

「あ、お父さん帰ってきた」

お父さんは、サッカーボールを肩に担ぎながらリビングへと入って来る。

「おっ、どうしたんだ二人で?」

サッカーボールを床に下ろし、お父さんはお母さんの隣に座る。

「今ね、お父さんとお母さんの馴れ初めの話を聞いてたの」

「うわぁ、まじかあ。それで、感想は?」

「お父さんとお母さんは、いろんなことを体験したり、経験してきたんだなって思った」

その言葉が嬉しかったのか、お父さんは微笑むと私の髪をわしゃわしゃと撫でた。

「お前だって、これからいろんな体験や経験をするさ。それを糧に、人は成長する」

「うん……。私、お父さんとお母さんの娘で良かったと、今凄く思うよ」

お母さんとお父さんは、お互い顔を見合わせて微笑んだ。

本当に私の両親が二人で良かったと思う。

私は、お父さんもお母さんも大好きだ。

「雪菜、今度その男の子に会ったらちゃんと言いなさい」

「ん?」

「気持ちは、伝えないと伝わらないって」

「うん……。伝えてみる」

そして、気持ちを伝えたその先の行動は自分次第だ。

『良かったわね、雪菜』

「うん!」

私も伝えてみようかな、優空君に私の気持ちを……。