fairy3 空の物語 上

『弱い人間を守って、何になるって言うんだ。そんな奴置いていけば、そいつだけ助かる確率だって上がるのに……』

『きっと、それが出来ないんだよ』

エンヴィーは、包帯を掴むと優しく巻き始めてくれた。

『人間にも好きな人や大切な人は出来る。それを失うことが、人間は怖いんだよ』

『だから、守るっていうのか?』

『これは、私が考えている答えの一つに過ぎない。きっと、人間個人個人が持っている思いは違うんだよ』

『思いとか、気持ちとか、そういうのを俺たちは知らない』

思い、気持ち、そんなの教わって育っていない。

勝手に閉じ込められて、勝手に考えて、勝手に生きてきた俺たちが、人間のことを理解するのは不可能だ。

だから俺は人間が嫌いだ。

何を考えて生きているのか分からないあいつらが、俺は憎らしい。

『でも、私たちだって人間と同じところはあるよ』

『人間と同じところ?』

『それは、誰かを好きになること』

その言葉に俺の心臓が大きく跳ねた。

エンヴィーがこんなこと言うなんて思っていなかったから、つい驚いてしまった。

『でも私たち妖精は、誰かを好きになったら一生その気持ちを引きずる。だけど、人間は新しい気持ちが芽生えれば、何度でも移り変わるこちが出来る』

エンヴィーの言う通り、確かに俺たち妖精も誰かを好きになる。

だけど一生同じ思いを引きずる俺たちと、新しい気持ちが芽生える人間とでは大きく違うんだ。

『だからね、私は思ったんだ』

『エンヴィー?』

包帯を救急箱に戻したエンヴィーは、立ち上がり窓の外を見つめた。

『同じ気持ちを一生引きずるなら、私は誰の一番にもなれないって』

『え……』

それってラースのことか?