fairy3 空の物語 上

「俺は、闘う理由なんてねぇよ」

『か、一葵!』

俺は正直に答えた。

ここで嘘をいっても仕方がないことだ。

『……』

ラースは表情を変えずにただ俺を見てくる。

「俺にも姉貴や弟、それに親父もおふくろもいる。だけど、守りたいと思ったことは一度もねぇ」

俺は昔のことを思い出し苛つく。

「それは、俺じゃなくても誰かが守ってくれるだろうと思っていたからだ」

俺なんかよりも姉貴の方が喧嘩が出来る。

勉強だって姉貴の方が得意だ。

いざとなれば姉貴が家族みんなを守ってくれるだろう。

『じゃあ、お前は誰かがやってくれる。なら、俺は守る必要はないと、そう思っているのか?』

「そんなことは思ってねぇよ」

『いや、お前の言葉からして、私にはそう思うぞ』

知ったようなことを言うやつだ。

だけど、よくよく考えてみたらそうなのかもしれない。

未来や愛斗が他の悪ガキ共にいじめられている時、俺はただそれを眺めていただけだった。

どうせ奏佑か雪菜が助けるだろう、俺は何もしなくてもいいや。

小さかった俺は、助ける前からそんなことを決めつけていた。

俺じゃなくても誰かがやってくれる。

なら俺は別にいい。

俺は握りしめていた拳を緩める。

「なんだよそれ……」

いざ自覚してみると俺ってかっこわりぃな。

そんな俺を見たクロアが俺の頬を抓る。

「いてててて!」

『なにしけた面してんだよばーか!』

「はぁ?!いきなり抓っておいて何言いやがる!」

『一つ聞くぞ馬鹿一葵、お前は今まで誰かがやってくれる、なら俺は別にいいって生きてきたかもしれないけど!』

クロアの顔が近くなる。

『じゃあ、なんでお前はそんなに喧嘩強いんだよ!』

「うっ!」

小さい頃の記憶が俺の脳裏を横切る。

「こらぁ一葵!」

「うわぁ!」

姉貴の楓が俺を投げ飛ばし胸ぐらを掴む。

「お前の本気は、そんなもんか!」

「くっ……」

姉貴に投げ飛ばされ体の節々が痛む。

柔道を習っている姉貴に、本気でかかっていったところで俺が勝てるわけがない。

「お前言ったよな?もう見てるのは嫌だって!」

俺は瞳に涙を浮かべて姉貴に言い返す。