fairy3 空の物語 上

【一葵】

『一葵ー!』

「……」

『一葵!!』

「……」

『おい、一葵!!!』

「いって!」

クロアに額を叩かれ俺は目を覚ます。

「あれ?俺寝てたのか?」

『そうだ!ぐーすか寝てたわ!起こしても起きねぇし!』

「わ、悪かったよ……」

それで、何で俺ここに居るんだっけ?

『お前、まさかここに来た理由忘れてないよな?』

図星をさされ肩が上がる。

「そ、そんなわけねぇだろ。ちゃんと覚えてるし!」

『ふーん……』

クロアは疑わしげな目で俺を見てくる。

「そ、それよりさっさそ終わらせるぞ」

そう言い立ち上がった時、何かが俺の足に擦り寄ってきた感覚を覚えた。

「なんだ?」

足元を見下ろした時、そこには真っ白な猫が俺の足に頭をすりすりしていた。

『猫だ。しかも真っ白』

「こんなところに猫がいるなんて珍しいな」

俺はその真っ白な猫を抱き上げる。

「お前、どこから来たんだ?」

「にゃあ?」

猫は首を傾げる。

よく見ると首輪が付いていて、そこにはマシュマロと書かれていた。

「へぇ、マシュマロって言うのか?」

「にゃあ」

返事の変わりなのかマシュマロは元気よく鳴く。

「そうか、でもこんな所にいたら、飼い主が心配するだろ?」

って言っても俺の言葉が猫に届くはずもないか。

『おい、お前……』

「はぁ?誰がお前だって?」

俺はマシュマロを抱えたまま後ろを振り返る。

振り返るとそこにはパーカーを着た女が立っていた。

フードを被っているせいで素顔は見えないが。

『そのをこっちに渡せ』

女はマシュマロに指をさす。

「なんだよ、お前の猫か?」

『違う、私の一番の子だ』

「一番の子ぉ?」

どういうことだ?

友達って意味か?

「にゃあ!」

マシュマロは俺の腕からすり抜けると女に駆けていく。

『やぁマシュマロ、こんな所にいたのか?』

女はマシュマロを抱き上げる。

どうやら一番の子というのは、友達という意味みたいだな。

「マシュマロのこと知ってるなら丁度いい、そいつのこと頼むわ」

そう言いその場を去ろうとした時、俺の足首に何かが巻きついた。

「うわぁ!」

そして俺はそのまま顔面から倒れる。

『か、一葵!』

「いってぇ!一体なんなんだよ!」

俺は体を起こして足首に視線を向けた。

「な、なんだこれ?」

俺の足首には鞭みたいなものが巻きついていた。

しかもそれは、マシュマロを抱いている女から伸びていた。

「てめぇ、何の真似だ」

『帰さない為だ。私は、まだお前に用がある』

女はマシュマロを下ろすと、俺に向かって歩いて来る。

「俺に用があるって、俺はお前なんか知らねぇよ」

『知らなくて当然だ。今日初めて会ったんだからな』

『まさか、お前……』

クロアは女の様子を伺っていた。

女は俺のすぐ傍に来ると、顔を俺に近づける。

『私は、憤怒の妖精ラースだ』

「なっ!」

『やっぱりか……』

ラースは、パーカーのポケットから鞭が伸びているケースを取り出す。

そのケースから伸びている鞭は、俺の足首に巻きついているものだった。

『まさか、七つの大罪がこんなところまで追ってくるなんて』

『命令だから仕方ないさ』

ラースは被っていたフードを下ろす。

『さて、さっさとリンクしてもらおうか?』

「簡単に言うなよ、出来たらとっくにやってるわ!」

ラースは目を細める。

すると鞭を使って俺を逆さ吊りにする。