『聖也は……自分が死ぬことは怖くないの?』


そう聞くと、聖也は目を丸くしてあたしを見た。


『むしろ、なんであの時代わりに死ななかったのかなって、思う』


その言葉にあたしは返事を失ってしまった。


彼女の代わりに死ねばよかった。


そう言っているのだ。


もしかしたら、聖也はずっとそんなふうな考え方をして生きてきたのかもしれない。


自分はあの時死ぬはずだった。


だからひたすら前向きに考えられるのかもしれない。


あたしはバスの窓の外を景色を眺めた。


見慣れた風景はなくなり、田舎道が広がっている。


山道にさしかかるまで、あと30分くらいだ。


あたしは鞄からナイフを取り出して、握りしめた。


少しだけ手が震えている。