人が忙しなく行き交う駅の構内で、耳にしていたイヤホンを外し、相変わらず気怠げな様子で私に手を上げる男性の姿。


「おはよう。川島君。待たせちゃった?」


「おはよ。生田さん。俺も今さっき来たとこ」


今日はいつもと違ってスーツを着ているせいか、いつにも増して世の女性方の視線を浴びている川島君。


元々人より抜きん出ていたルックスが、ここ最近では更に磨きがかかり、大人の色気まで醸し出し始めたものだから、今じゃどこを歩いていても女性達の注目の的だ。


一緒にいるこっちの身にもなってほしいのだけど……。


ほら。今だって“あの女、彼のなんなの!?”的な視線を四方八方から受けてる私は、息苦しくて仕方ない。



そんな事を考えていれば、川島君の視線がじっと私を捉え、それにはついドキッと心臓が跳ねてしまった。


「生田さん、いつもと感じ違うね」


「さ、さすがに今日は私も綺麗目にしなくちゃと思って…変…?」


5月の陽気に合わせた白のタートルネックに膝丈より少し長めのAラインスカート。色は紺色にしたし派手ではないと思うんだけど……。


初日にして少し砕けすぎただろうか?


でも、節度ある格好ならスーツじゃなくてもいいと言う話だったし……。


「んや。キレイ」