どれくらい前の事だろう?


もう、覚えてもいないくらい小さな頃だったと思う。


鈴の音を鳴らしてやたらと楽しげに聴こえる音楽と、半日かけて飾り付けをした賑やかに彩られたクリスマスツリー。


その下で、幸せそうな笑みを浮かべているお母さんと、そんなお母さんの肩を愛おしそうに抱くお父さん。


私はそんな2人を見上げ、ポカポカと温かく満たされる心を感じながら薄紅色に染まった頬を綻ばせる。



家族がバラバラになってから、クリスマスなんてろくな思い出がなかった。


お母さんはクリスマスだからといって仕事を休んだりはしなかったし、サンタとかいう気前のいいおじさんが来た試しもない。


賑やかな街も、わざとらしく楽しそうに振る舞うテレビの中の芸能人達も、私には関係のないことで。


むしろ、もっと他にやる事はないのかと冷ややかな目で見ていた。


私にとってクリスマスなんて、“来年からクリスマスというイベントはなくなります!”なんてニュースが流れたとしても、“それがどうした”くらいにしか思わない本当にどうでもいいもので。


それなのに、毎年クリスマスになると必ず鮮明に思い出されるあの記憶が、私は鬱陶しくて仕方がなかったんだ。


クリスマスなんて、大嫌いだった。