月曜の朝。いつもよりちょっと早起きして、身なりを整えた。
ちゃんと神谷さんに選んでもらった、ブルートパーズとホワイトトパーズが輝く、ティアドロップをモチーフにしたネックレスと、同じ石とモチーフのブレスレットもつけた。
今日神谷さんの部屋に行けなくてもいい。約束がいつ果たされるか分からないから、その日まではこれを付け続けようと思った。
出勤すると、スタッフルームの机で腕を枕にして、神谷さんがぐったりしていた。
顔を覗き込むと、また目の下にくまができている。顔色も悪い。近付くと、ほのかにお酒の香り。きっとゆうべは遅くまで連れまわされたのだろう。
「大丈夫ですか?」
声をかけると目を閉じたまま「大丈夫だよ」と返ってきたけれど、声が少し掠れている。大丈夫そうには見えない。
「今日は平日なので、しばらくここで休んでいてください。具合が良くならないようでしたら早退してくださいね」
言うと神谷さんはゆっくりと目を開けてこちらを見上げ「帰れるわけないよね」と漏らして目を細める。
「せっかくそのジュエリーを付けて来てくれたんだから、今日こそ部屋に連れ込まなきゃ」
「連れ込むって……。そういう意味に聞こえるのでやめてください」
「ああ、ごめん……。今朝方までおじさんたちと一緒だったから影響されたかも。セクハラっぽかったね……」
顔色は悪いけれど、そういう発言をする元気はあるらしい。くすりと笑って神谷さんの背中を撫でたあと、すぐそこのコンビニまで走ることにした。今日こそ部屋に連れ込んでくれるらしい神谷さんに、栄養ドリンクくらい差し入れなければ。
平日のため店はずっと静かで、ゆったりとした時間を過ごすうちに、神谷さんの体調も大分回復したようだった。
どうにか閉店まで持ちこたえたけれど、顔色はまだ優れない。心配した今井さんが「元気出してください」と飴をあげていた。子どもか!
今井さんが帰ったあと「今日はやめておきましょうか」と提案したけれど、意地でも部屋に連れ込みたいのか、少しむっとしながら「邪魔が入らないうちに行くよ」と立ち上がった。
そして神谷さんの車で、早々と帰路についたのだった。