櫻井滋は過去を懐かしむかのように言った。



自覚はしているらしい。


自分で言うのはどうかと思うが、記録が残っているのだ。



「でも、やっぱり一弥のお父さんたちのことは知りたかったし。だから僕たちは一弥に協力したんだよね」


「知り合いだったのか?」


「うん。幼なじみって言ったらなんか違うんだけど……とにかく気付けば一緒にいたって感じ」


あたしにはよくわからない感覚だな。



「滋?なにして……」



新田海はあたしとウサギを見て言葉をつまらせた。



今さら何をしようってわけではないのだから、逃げようとする必要はないのに。



「久しぶりだね、海」



櫻井滋は彼のもとに駆け寄る。



「滋、ちゃんと説明しろ」



新田海は顔をしかめた。



かなり不機嫌だな。


あたしがここにいたのがそんなに気に食わないか。



「僕が出たときにはもうここにいたんだ。なんか、僕たちに話があるんだって」


「……手短に済ませろ」



新田海は若干睨みながら言ってくる。



しかし、聞いてはくれるのだな。


てっきり門前払いかと思っていた。



「成瀬一弥にも関わることだから詳しくはまだ言えない。簡単に言えばお前らのこれからのことだ。それじゃ、邪魔したな」



あたしは本当に手短に済ませ、その場を去った。



次に彼らに会うのは、一弥が出てくるときか。