すると正広は箸を止めた。



「……14年前のか?」



そして1段と低い声で言う。


一気に空気が重くなる。



「ああ、そうだ」


「それが今さらどうかしたのか?」


「犯人がわかったかもしれない」


「え?かもしれない、なの?昨日はあんなに自信満々に僕に離してくれたのに」



ウサギ、余計な口を挟まないでほしい……


ややこしくなる。



あたしが話している相手はウサギみたいな一般人ではなく、警視総監なのだ。


これといった根拠もなく言い切るわけにはいかない。



「雪兎、少し黙ってろ。知由、続けて」



正広の一言でウサギはなにも、というか口を開こうとしなかった。


あたしはうなずいて説明を続ける。



「昨日、柏木冬馬に乱魔を聞いたことないか、と聞いたんだ。もちろん、15年くらい前と言って。そしたら、あると言ったんだ。そこまではよかった。だが、あいつはあたしの質問に続けて、総長が乱魔の人間に殺されて乱魔は自然壊滅したと言った。意味、わかるだろう?」



あたしはひと息つき、香苗が出してくれた麦茶を喉に通す。



正広はまだ手は止めていたものの、ゆっくりとうなずいた。



あたしはコップをテーブルに置いた。



空気がシン……とする。



「……知由はどうしてその14年前の事件を知ったんだ?」


「ちょっとな」


「乱魔が昔にも存在していた、とわかっていたんだろ?」



さすが警視総監。


ウサギ以上に鋭い。