「帰るか捕まるか。どちらを選ぶ?乱魔よ。これ以上お前の好きなようにはさせん」
あたしがこうして話す間、乱魔は一切口を開かなかった。
だが、そろそろか。
あたしはウサギにだけわかるように、合図を出す。
するとウサギの視線があたしの黒いカバンに行く。
もちろん乱魔はこれに気付いているだろう。
次は空海が電気を消し……
するとばっと部屋中の電気すべてが消えた。
なんとも行動が予測しやすい。
電気が戻るまで2、3分ってとこか……
「え、え!?ちょ、明かりは!?僕の万年筆、大丈夫なんですか!?」
ふむ。
柏木冬馬の演技力もなかなかだな。
乱魔の思惑通りにいくならば……
「落ち着け!無事だから!」
このセリフが妥当だろう。
あとは電気が戻れば……
お、戻ったな。
予想より早かったぞ。
そして目の前にはあほ面の乱魔。
「残念だったなぁ、乱魔」
乱魔の顔を見ていると笑いが止まらない。
すると乱魔が顔をしかめた。
「どうした、乱魔。もう終わりか?」
あたしとしてはまだまだ終わらせたくないのだが。
「今日はここまでにしとく。次はねぇから」
「ふっ……それはこっちのセリフだ。次こそ捕まえてやる」
そしてあたしたちは睨み合った後、乱魔は逃げていった。
「よかったぁ……」
乱魔が逃げて脱力したのか、柏木冬馬はその場にしゃがんだ。



