言うわけがないとわかっているが、一応聞いてみる。
「ガキに言うわけねぇだろ。おとなしく寝とけや」
やはりな。
それよりも今回は相当口が悪い。
それだけ気分が悪いのだろうか……
「あ?」
と予想しておきながらも、こう言ってしまう。
「聞こえなかったか?帰れっつったんだよ」
乱魔も挑発してくる。
しかしそれには乗らない。
「帰るわけないだろう。あたしはお前を捕まえるまで追い続ける」
そう言いながら乱魔を睨む。
暗闇の中だから奴にそれが見えているかどうかは別として。
「ふーん……せいぜい頑張りな。俺は捕まんねぇから」
乱魔はそう言うと姿を消した。
柏木冬馬のところに来るためだろう。
あたしたちも行動を開始するとしよう。
数分後、居場所を突き止められ、乱魔が再び現れた。
「こんばんは、柏木さん」
あたしたちは柏木冬馬の前に並んで立つ。
柏木冬馬の手の中には万年筆があるのだが、当然偽物。
本物は別のところに保管してある。
これで乱魔がうまく釣れればいいのだが……
柏木冬馬の手元を見た乱魔は固まって動かない。
気付いたか。
「どうした、乱魔。盗まないのか?」
乱魔を上回ったような気分で、つい頬が緩む。
「おとなしく帰るのはお前のほうのようだな」
さっき乱魔に言われた言葉を返す。



