あれから約2週間後、乱魔から予告状が届いた。


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今宵、柏木冬馬殿の腕時計を
いただきに参ります。

怪盗乱魔
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柏木冬馬……?


財閥ではなく、一般人……?



そもそも、柏木冬馬とは誰なのだ……?


というか、腕時計は宝なのか……?




あーっ!


全然わからない!


どういうことだ!?


なぜ急に乱魔はレベルを下げたのだ!?




もしかして……



「乱魔が怪盗になる……?」


「ちぃ?それ、どういう意味?」



どうやら最後の1文だけ口にしていたらしく、ウサギが聞いてきた。



「この予告状で、乱魔が宝を狙っていない、ということはわかるな?」


「え?そうなの?」



そこからか。



「柏木冬馬はおそらく一般人だ。このような名前の財閥の人間はいないからな。そして腕時計もたいして高価なものではないはずだ。それなのに、乱魔が狙うということは乱魔自身、柏木冬馬に恨みかなにかがあるのだろう。そして、今夜乱魔は……柏木冬馬の腕時計を本当に盗む」


「っ!」



するとウサギが息を呑んだ。



「知由、ちゃんと説明……、いや、簡単に教えてくれ!」



そしていつの間にかあたしの近くに来ていた正広が慌てた様子で言ってきた。



前にもこういうこと、あった気がするな……


まあ、だから正広は『簡単に説明しろ』と言ったのだろうな。



あたしが説明下手だから。



「今夜、乱魔は柏木冬馬の腕時計を盗む。
そして柏木冬馬は一般人だ。だから、きちんと警備する必要がある」