聞き覚えのある声。
そして、格好。
間違いない、乱魔だ。
よし……
「あー!やっと来たぁ」
あたしはその背中に、甲高い女子の声をぶつける。
それを聞いた乱魔はキョロキョロとあたりを見回す。
そして、あたしを見つけ……
「なんでっ……!?」
目を見開いた。
「どういうことだ……」
予想以上に動揺している乱魔。
上手くいった。
「いろいろ知りたいって顔をしてるな。乱魔よ。お前がおとなしく捕まってくれるなら話してやってもいいぞ?」
乱魔の表情がどんどん変わっていく。
予想外のことが起これば、これだけ動揺するのか。
まったく天才でないではないか。
「お前、何者だ……!」
乱魔の言葉にはもう余裕がない。
これはもうあたしの勝ちも同然だな。
ならば、ここは楽しんだ者勝ち。
「クク……焦りは禁物であろう?」
乱魔があたしを睨んでくる。
部屋が静寂に支配される。
すると、乱魔の無線機に誰かから連絡が来たようだ。
「わりぃ、トラブル発生だ」
ほう。
乱魔にとって、あたしはトラブルなのか。
「思わぬ敵の登場だ」
『思わぬ敵』
それを聞いて、無性に嬉しかった。
乱魔に敵視されている。
なんだか、それだけで十分に思えてきた。



