「じゃあ……ちぃちゃんね」
変な呼び名はやめてほしい。
でも、不思議と嫌ではなかった。
「僕のことはどう呼んでもいいからね」
この人の名前は確か、すみよしゆきと。
「『ゆきと』ってどう書くのか?」
もう普通に話せる。
こんなこと、初めてだ……
「雪に兎だよ」
雪兎は普通だし……
雪うさぎもありがち。
というか、長い。
だったら………
「ウサギだな」
「え、ウサギ!?」
なにか気に入らなかったのか、ウサギは目を見開いている。
あたしは結構気に入ったのだが……
「ダメか?」
初めて目を合わせた。
「うっ……」
ウサギはなぜか言葉を詰まらせた。
「……いい、よ……」
なんだかいやいや承諾した感じはするが、本人の許可は得たのだ。
今後はウサギと呼ぼう。
「さ、中に入って」
あたしは案内されるがままに家の中に入る。
「すごい……!」
入った瞬間広い玄関。
靴箱の上にはガラスのような綺麗な置物。
「……お邪魔します……」
靴を脱ぎ、そろえる。
「ちぃちゃん、小さいのにお行儀いいね」
余計なお世話だ。
自分が小さいことくらい重々承知している。
「何歳なの?」
「5歳」
「5歳!?」
前を歩いていたウサギは足を止め、驚いている。
「5歳であの図書館にあった本、全部読んだの!?」
まぁ、そういうことになる、か。
「いつから読み始めた?」
いつからだっけ……
たしか、1歳になるときには施設の本を読んで、3歳から……
「3歳から読み始めて、2年で読破」
我ながらすごいとは思う。