あたしが乱魔にラビットと言えば、代理は必要ない。
だから、ウサギはなにもしなくていいのだ。
というより、することがない。
「知由!」
ウサギにどう言えばいいのかわからず、迷っていたときに、正広に呼ばれた。
「なんだ?」
あたしはうなだれるウサギを置いて、父親のところに行く。
「今回の警備なんだが、お前がすべて指示しろ」
「いいのか?」
嬉しさはもちろんあった。
だが、それ以上に、こんな子供に任せるのか、という疑問もあった。
「当たり前だ。もうお前の中でプランがあるんだろ?」
それはそうだが……
若い刑事たちの視線が痛いぞ……
「捕まえる自信はあるか?」
「そんなの、ないわけないであろう。だが、捕まえるのは今回じゃない」
あたしの言葉にその場にいる全員が目を丸める。
「今回は乱魔を動揺させることが目的だ」
「動揺……?」
皆、意味がわかっていないようだ。
まあ、無理もない。
「ラビットの正体があたしだ、ということをバラす」
「「…………」」
なぜ黙り込む。
なにか言ってくれたほうがあたしとしても、助かるんだが。
「この子がラビットなんですか!?」
そこか!?
「警視総監の息子さんがラビットじゃないんですか!?」
いや、そう思われていても仕方ないが!
お前らが動揺してどうするのだ!
「僕はちぃちゃんの代理人ですよ」
ウサギがあたしの後ろに立っていて、そう言った。
人ごみの中から、知らなかっただの、信じられないだの、多くの言葉が耳に入った。
「わかりました」
「その子がラビットなら指示に従いましょう」
おぉ……!
ラビットの名も馬鹿にできないな。



