それは興味深いが………



「あ、そっか。親御さんになにも言わないで僕に付いてくるわけにはいかないよね。今度、保護者の人に会わせてよ」



その言葉があたしの胸に刺さった。



保護者の、人。


そんなの、あたしにはいない。


会わせるもなにも、いないのだからどうしようもない。



だったら付いていっても問題ないかもしれない。


怪しさしかないが、この人が悪いことをしようとしているとは到底思えない。



「じゃあ、また……」



彼が帰ろうとしたため、あたしは彼の服を引っ張った。



「……………ぃく」



下を向いたまま、小さな声で言った。



「ホント!?」



やはり、やめとくべきだったか?


彼はここが図書館であることを忘れてるのか、想像以上の声だった。


ほら、回りの目がいたい。



「今日来れる?」



だが、彼は気付いていないようで、嬉しそうに続ける。


少しは迷惑、という言葉を知るべきだ。



まあ、そんな人間についていこうとしているあたしもおかしいのかもしれないが。


あたしは彼の問いに黙って首を縦に振った。



「行こっ!」



すると、強引に手を引かれ、あたしたちは図書館を出た。



……もうここには来られないな。


そんなことを思いながら、ただ彼に手を引かれるだけ。



「ここだよっ」



彼が止まり、顔を上げるとそこにはあの図書館よりも大きな建物があった。



「わぁ………!」



なるべく声を出さないように。


それがあたしのポリシーなのに。


つい、声を出してしまった。



「ねぇ、名前、教えてくれる?」



声を聞かれた、という後悔はなんだったんだ。



……変わった人だな。



「三崎知由(みさきちゆ)だ」