しかし、今のあたしは漢字が読めない小学生。


だから、首をかしげる。



乱魔はあたしの反応で気付いたのか、その紙になにか書き加える。


そして、また紙を見せてきた。


今度は漢字の上に読み仮名が書いてある。


仕方ない。


あたしはうなずいて、カバンを机の上に置き、ソファに横になる。


すると、ブランケットを掛けられた。



「一弥、僕らも寝よ」



空海でないほうの男があくびしながら言った。



「あー、俺ここで寝る」



そんな……


それだとパソコンが使えない……



「おやすみ、みさき」



そんな心配をよそに、乱魔はあっという間に寝入った。


……パソコン、使えるか?



あたしはゆっくりと体を起こす。


想像以上に部屋が暗い。



乱魔が起きる気配はない。


静かにすれば、バレない……だろう。



あたしはパソコンを立ち上げ、ウサギにビデオ通話をする。


声を出すと乱魔が起きてしまうかもしれないから、スケッチブックを使う。



『今、横で乱魔が寝ている。できるなら筆談をしてほしい』



すると、画面に映ったウサギはうなずいて、どこかに行った。


数秒後には戻ってきたが。



『電話でなにを言ったんだ?』


『ちぃちゃんを返してって頼んだだけだよ』


『ちぃ、と呼んだのか!?』


『まさか。ちゃんとみさきって呼んだよ』



あたしはホッと胸をなでおろした。



『明日には戻らないといけないけど、なにか情報は得られた?』



そんなの……


ないに等しい。


乱魔の仲間に空海がいて、乱魔の本名は一弥、ということしかわかっていない。



あたしは何度か首を横に振った。



『どうするの?』


『どうにかする』



こちらの望む情報が得られなかったなら、よろしくない手段でも情報を得てやる。


乱魔を捕まえるために──



そして電話を切り、パソコンをカバンの中に戻す。


このまま乱魔を捕まえられたらいいのに、と思いながら目をつむった。