それなのに、ウサギは「わかりやすい」って。
……頭がおかしいのか。
「ちぃちゃん、今僕の悪口考えてるでしょ」
……エスパーか、お前は。
だが、残念なことに。
「なにを言っている。お前の悪口はいつも考えている」
「それを素直に言うもんね、ちぃちゃん」
なぜ楽しそうに言うんだ。
とは聞かず、そのまま黙って腕を引っ張られていた。
「10時まであと1時間くらいあるね」
ウサギが腕時計を見ながら呟いている。
しかし……
いつも以上に気合いが入っているな、今日は。
「雪兎君!」
すると、中年の男がウサギに近付いてきた。
「なんでしょうか?」
……キャラの切り替えが早いな、ウサギ。
「少しこれに目を通してくれる?今回の警備の図案なんだけど……」
「それならさっき見ましたよ?」
あたしがな。
「あれから少し変わったんだ。どうしても乱魔を捕まえたくてね」
「なるほど……」
雪兎はそう言いながら、しゃがむ。
もちろん、その資料をあたしにも見えるようにするためだ。
「雪兎君、その子は?」
珍しいな。
あたしのことを知らない捜査官がいるなんて。
「僕の妹の知由です」
あたしはウサギに紹介されると、軽く頭を下げた。



