「本、読むの好きなの?」



近場の図書館にある本を読み漁ってたら黒の眼鏡をかけ、茶色のブレザーの制服を着た男の人に声をかけられた。



「………」


「あ、ごめんっ。僕、最近ここに来てるんだけど、よく君を見かけてね。難しい本を読んでるみたいだから、最初はお使いかなにかかと思ったんだけど、君が読んでるみたいで……よかったら家にある本を読まないかなって思って………」


よく話す人だな。



それがこの人の第一印象。



「………」



あたしはどれだけ話しかけられても答えなかったんだけど。



「僕、住吉雪兎(すみよしゆきと)。気が向いたら声かけてよ」



その人は言うだけ言って、どこかに行ってしまった。


もう、会わないだろうな……



なんて思ってたのに。



次の日。



「こんにちは」




本棚の本に手をかけていると、昨日のように声をかけられた。



「考えてくれた?」


「………」


「おーい……?」



このまま気を使って黙ってくれないだろうか……



「聞いてる?」



彼はそう言ってあたしの顔と本の間に手を出してきた。



「!?」


「あ、やっとこっち見てくれた。ごめんね、邪魔しちゃって。でも、こうでもしないと話してくれないと思って……」



当たり前だ。


話す気などもともとないのだから。



「君、ここの本、全部読んだの?」



ここ……?


図書館の中の、ってことか……?


だとしたら、もう読み終えた。



あたしは首を縦に振る。



すると、男は嬉しそうに笑った。



「じゃあさ、家に来なよ。ここの本以上のものがあるから。僕の父親、警官でね。いろんな資料がたくさんあるんだ」