「最初は誰が歌うー?」
くだらないケンカをしていた
祐翔と隆也は私と健太の
黒笑(ブラックスマイル)で
強制的に黙らせといた。
隆也の唖然とした顔……ぷっ。
面白かったな。
可愛いとこあるじゃん。
ただし……。
「じゃあ僕が最初に可愛いく
アイドルソングいっきま〜す♡」
「…………」
「好きっ♪好きっ♪Chu!Chu!Chu!」
「…………」
「あぁ!愛しのミッキーが甘い瞳で
僕を!僕だけを見つめてる!はぁん♡」
「「悶えてないで さっさと歌え!!」」
私と剣太の祐翔へのツッコミがシンクロした。
この自意識過剰金髪たらし男め……。
私と健太の黒笑がなかなか効かない相手なんて
滅多に居ないのに。
(まだ特訓が足りないかな?)
私は左隣に座ってコーラを
喉を鳴らしながら飲む剣太を
じっと見つめてみた。
「あ?どした?」
「……」
「え、ちょ、待っ……いくら何でも
ここで、その……キ……」
(せーのっ!)
ーーーーーフロント
「ありがとうございま……」
「ぎぃぃぃやあぁぁぁっ!!!!!」
「えっ!?」
ーーーーー501号室
「あ。剣太が死んだ。ゲームオーバー?」
「うっ……あああ……」
「え、ちょ!?剣太が泡吹いてる!?
怖いよーーーっ!!」
「やった!やはり黒笑の秘密訓練は
成功のようだ!」
「隆也、死んだとか言うんじゃない!
剣太も泡を吹くな!
龍、叫ぶな!
美紀ちゃん簡単に黒笑使っちゃダメ!
フロントの人が心配して来るでしょ!」
「きっみっをっ♪こーの手ーにー♪」
「祐翔も、よくこんな状況で歌えるね!?」
健太がツッコミ入れてる〜!
たのしーーーいっ!!
「美紀ちゃん、いつ
黒笑の特訓なんてしてるの?何でしてるの?
いい?ここを剣太の墓場にはしちゃダメ」
ガバッ!!
「健太までオレを勝手に殺すなよ!!」
「お。コンティニュー?コンティニューなの?」
「良かったー!剣太〜!」
「だあぁぁぁっ!抱きつくな龍!気持ち悪ぃ!」
ギャーギャー騒ぎながら笑ったり怒ったりする
イツメンに、賑やかだなぁ……と
呆れたようなホッとしたような溜め息をついて
静かに見守る健太は、まるで…………
「私たちの“お母さん”だね!」
「…………美紀ちゃん、せめてお父さんにして……」
ーーーーー

