「一弥」
すると、海がドアから顔を覗かせ、手招きしている。
俺は車のドアを開け、少女を抱きかかえる。
そして、なぜかあるソファーに寝かす。
カバンは取ったほうがいいよな。
そう思ってカバンを取ろうとするけど、少女はそれを握りしめて離さない。
そんなことされたら中身が気になる……!
だけど、小さくたってこの子は女の子。
勝手に見るなんて……
だけど……
すると、スマホのバイブオンがした。
電源をつけ、表示されたのは、
『海からメッセージです』
なるほど。
これで会話しようってか。
俺はメッセージを開く。
『どうしてすんなり脱出できたんだ?』
まあ、もっともな疑問だよな。
ここは素直に言うべきか……
うん、言おう。
『若い男がいたんだ。そいつが今回は乱魔と話がしたかっただけだから、さっさと逃げろ。って、逃がしてくれた』
『はぁ?ふざけてんのか?』
やっぱ、そうなるよな。
『その男、ラビットかも』
今度は滋からだ。
ラビット?
誰だ、それ。
『空海以上のハッカーとしての能力を持ち、かつ、乱魔以上に頭の回転が早い。まともに戦ったら、僕らに勝ち目がない相手』
かれこれ3年。
『乱魔』の敵となる人物はいなかった。
このまま俺の思う通りにいくと勘違いしてた。
だけど、ここで負けるわけにはいかない。
あの男が……
いや、違う。
あの男に指示してる人物が本物のラビットだ。
ったく、姿を見せろよな。
それにしても、滋はこんな情報、どっから手に……
っと、これは気にしたら負けだった。



