天才怪盗が拾った少女



「なんと。お前は柏木に接触してたということか?」


「まあな。つっても、だいぶ前の話だ」


「ならば、あまり関係がないな。しかし、それがあったからこそ、成瀬咲が殺された理由がなんとなくわかったのであろう」



確かに三崎が言うとおりだ。


俺が柏木と会って、殺されなかったから、咲は巻き込まれて死んだ、ということが証明されたのだ。



「では、なぜ柏木が成瀬優弥を殺したのかがわからないのだな?」


「あぁ」



15年前になにかがあったってことくらいしかわかんねぇ。



「15年前、柏木は確かに誰かに成瀬優弥を殺せ、と言われた」



えっ……


あれって嘘だったんじゃ……



「殺したら、お前の借金をチャラにしてやる、ともな」


「!?」



だからか!


そうすると柏木は得する!



「わかったか?」


「当たり前だろ。でも、なんで柏木が借金してたってわかったんだよ」


「企業秘密だ」


三崎はそう言ってパソコンを大事そうに抱えた。



なるほど、それで調べたんだな。


それ以上は聞かねぇけど。


聞いたとこでわかんねぇし。



「それで?誰が言ったんだ?」


「さあな。そこはまだわかってない」



……無責任なやつだな。


ここまで来たら最後まで考えろよ。



いや、そもそもこいつは『どうして成瀬優弥が殺されたのか』しか考えてねぇんだ。


誰が言ったのか、なんて1ミリも頭にねぇんだろうな。