「じゃあさ、1個聞いていい?」
柏木のほうは終わったみたいだし、三崎に声をかけるのも許されない。
だから、俺は雪兎に話しかけた。
「なんでしょう」
「お前ら、いったいどういう関係だ?」
「義兄妹です」
「ホントか?」
「この期に及んで嘘つく理由なんてないですよ」
それもそうだよな。
でも、あいつらはそんなこと一切言ってなかったぞ……
それに、名字は……
「できるならちぃちゃんには『住吉』を名乗ってほしいんですけど、彼女は『三崎』という名字を気に入ってるみたいなので」
要はわがまま言ったってわけか。
どこのお嬢様だよ。
「雪兎、柏木の取り調べが終わったから、ここを出たいんだが……」
住吉は雪兎に話しかけつつも、視線は三崎のほうに向けられている。
あー、こいつのせいで出られないってわけね。
少しからかってやろう。
「三崎」
「…………」
名前を呼んでも反応なし。
こいつの場合、無視してる可能性が高いよな。
思いっきり邪魔するとしたら、パソコンを閉じるくらいしかねぇけど……
やってみるか。
抜き足差し足で三崎に近付く。
あと5歩。
4、3、2……
「ん?なにしてるんだ?」
すると、急に顔を画面から離し、俺の顔を見つめてくる美少女。
なんでこんなタイミング悪いんだよ!
あと1歩なのに!
気付くとかなしだろ!
「ちぃちゃん、移動するよ」
俺が肩を落としてるのをほって、雪兎がかがみながら言った。
「わかった」
三崎は素直に言うことを聞き、パソコンを閉じた。
俺の努力……!



