天才怪盗が拾った少女



いや、こっちは本当かもしれない。


本気で殺そうとしていたのが俺ら家族だとしたら、俺に会ったときに殺すはず。


だったら、咲はただ自分の親を守りたくて、殺されただけ……?



「……咲ならあり得るや」


「ん?なにがだ?」



三崎が俺のほうを見上げている。



……こうやって見たら天使なのにな……



「いや、咲なら親父を守りに行くだろうなって思ってさ」



そう答えてやると、三崎は顎にてを当ててなにか考え始めた。



「ウサギ、ここでパソコンは使ってもいいのか?」


『ウサギ』と呼ばれた雪兎は「あ、うん……」としどろもどろに答える。



雪兎の答えを聞くと同時に、三崎は黒いカバンからノートパソコンを取り出した。


ホントはこっちが入ってたわけだ。


スケッチブックは俺を騙すために入れてたものだもんな。



ノートパソコンを開き、床にしゃがみこんだ三崎。



「なにすんだろ……」


「やめたほうがいいですよ」


画面を見に行こうとしたら、雪兎に止められてしまった。



「なんで?」


「邪魔したら怒られるので」



あー、確かに。


このガキならあり得なくもない。



すると、すごいスピードでキーボードを打つ音がした。



「……こいつ、8歳だよな……?」



俺の頭ん中には、その情報がある。



「えぇ、そうですよ」



雪兎は保護者的な視線を彼女に送る。



「なに、この超人技」


「気にしたら負けです。それに、これくらい普通ですよ。ちぃちゃんは天才少女、ですから」



天才少女……



というより、三崎の呼び方が気になったんだが。



ちぃちゃん?


なんだそれ。



なんでちぃ……


あ、忘れてた。


名前、三崎知由だった。


だから、ちぃ、ね。


なんともかわいらしい呼び名じゃねーか。


本人には全くもって似合わねぇけどよ。