ちなみに、『乱魔』の名もこれに関係してくる。
『乱魔』ってのは、昔、15年前は暴走族の名前だった。
そこの総長が俺の親父、成瀬優弥(なるせゆうや)。
でも、みんな親父を慕ってたし、そこまで悪いことはしてなかった。
みんな、見た目はあれなんだけど。
俺とか、咲にも優しかった。
だから、2人が殺されたってのも意味わかんなかった。
俺が逃げれたのは、昔から親父にいろんなことを叩き込まれてたから。
どうやったら逃げれるか。
どうやったらケンカが強くなるか。
教えられてるときは、なんでこんなことをって思ってたんだ。
でも今となっては、こんときの知識が生かされてんだけどな。
犯人は強盗とかかと思ってた。
だけど、その5年後、乱魔にいて、親父の1番弟子だった柏木冬馬(かしわぎとうま)にたまたま出会って、聞いたんだ。
2人を殺したのは『乱魔』の人間だ。
ってな。
今考えれば、どうして彼がそんなことを知っていたのか、不思議でならない。
もしかしたら、彼が犯人なのかもしれない。
でも、なんの証拠もない。
俺がこうやって『乱魔』の名を使うのは、親父が死んで解散となったはずの『乱魔』の活動が再開された、と思わせるため。
すっげぇでかい組織だったんだ。
誰が乱魔にいたのかなんて、わかんねぇ。
それに、名簿があんのかと思えば、それもない。
親父が団員全員の名前を暗記してたらしい。
全員だぜ?
総勢1000人以上。
そんだけの名前、覚えられるわけねーじゃん。
なのに、親父は覚えてたらしい。
近くにいる人間から下っ端の人間まで。
誰にでも分け隔てなく接してた。
だから、恨まれる、なんてことはあり得なかった。
そう、あり得ねぇんだよ。
だからこそ、なんで殺されたのかが知りたい。



