「あたしが敵とわかった瞬間に態度を一変させるとは……相当器が小さいな」
はぁ!?
と言いたいとこだが、ここは我慢に限る。
ここで怒鳴ったってこいつが楽しむだけだ。
「まあ、いい。名前くらい教えてやろう。あたしの名前は三崎知由(みさきちゆ)だ」
三崎、知由…………
「乱魔ぁ!」
部屋の外でパタパタと足音がする。
「ちっ……」
こいつに聞きたいことは山ほどある。
だが、ここで捕まるわけにはいかない。
俺は舌打ちし、その場から脱出する。
三崎は驚いていたが、そんなの無視だ。
今はとにかく逃げる。
「空海っ!」
車に乗り込み、運転席に座っている空海を呼ぶ。
しかし、こいつは上の空。
まあ、無理ねぇよな。
俺だってまだ信じらんねぇし。
でも……
「おい、空海!」
このままここにいたら捕まる。
俺だけじゃなくて、空海も。
「ん、あ、乱魔……」
「急げ、空海。逃げるぞ」
「あ、あぁ……」
それからというもの、車の中では話せなかった。
なにを言えばいいのかわからなかった、とも言える。
「……一弥」
運転しながら弱々しい声で俺の名前を呼ぶ海。
「あ?」
「ホントに、あのときのガキがいたのか?」
「ああ、いた」
「どうして敵だって思った?」
「勘だよ。それと、あいつの表情。明らかに変だった」
そう。
三崎知由は変だった。
まるで、すべてを楽しんでるような。
俺、乱魔と勝負ができて嬉しいというような雰囲気を漂わせてた。
そういえば、『保護者』だと言ってたやつの名前って住吉雪兎、だったよな……
名字、違わねぇか?
もしかして、親子じゃねぇ……?
あいつらの関係って……?
「海、三崎知由と住吉雪兎について調べてくれねーか?」
「は?誰だよ、それ」
「みさきとその保護者の名前だ」
「わかった」
これで2人について、詳しく知れる。
あとでSにも情報収集を頼んでおこう。