天才怪盗が拾った少女




今度はゆっくり言った。


すると、少女は俺があれだけ気にしてたカバンからスケッチブックを取り出した。


それも、かなり大きめの。


もしかしてこれを持ち歩くためにあんな大きいカバンを?


バカじゃねーの。



って、そこじゃない。


こいつ、俺の話も聞かず、落書き始めやがった。



どういう神経してんだよ。


大人の話は聞け………



「ん?」



その子は俺にスケッチブックを向けてきた。


そこには幼い子らしいひらがなでなにか書いてある。



「み、さ、き……?」



それを読むと、その子はコクン、とうなずき、自分自身を指差した。



もしかして、こいつ耳が聞こえねーのか……?



俺はバッ、と海たちのほうを見た。


どうして見たかは自分でもよくわかんないんだが。



「一弥が筆談してあげなよ」


「お前が連れて来たんだろ」



うわー……薄情なやつら。



ま、いっか。


俺は紙とペンを用意し、みさきの近くに座る。



『どうしてあんなとこにいたんだ?』



さっと書いて、みさきに見せる。


みさきはゆっくりと字を書いていく。



書き終えると、スケッチブックを立てて見せてくる。



『わからない』



え、わかんないってなんだよ。


誰かに置いていかれたってことか?


じゃあどうすんだ。


今後、みさきの世話をしながら犯罪をしろってか?



そんなわけにはいかねーだろ。


せめて、なにか手がかりがあれば……