どうしてかな? 彼の顔を覗き込む。 風に吹かれて流れる髪を左手で押さえながら、そっと顔を近づける。 波の音に、心臓の音が重なって響いていた。 どうしてかな? 彼にキスをしたのは。 ――同じ自分も気づいたら居なくなってて……、変わりたくなんかなくっても。 ゆっくりと、彼の頬からくちびるを離して、彼の髪を撫でた。 彼があたしにしてくれたように。 それからまた、さっきまで、そうしていたように、彼の隣に寝そべって目を閉じた。 まぶたの裏で滲んだ涙の色は、どこまでも深い碧だった。