「…さて、校内の何処から探そうか」
「休日なのに入れるんだ?」
「うん、だって部活生がいるから日中はね」
「なーるほど」
ちょっと今は正午過ぎ。
二人は自転車に乗って学校へとやって来た。
自転車を止め、昇降口へ向かって歩いている。
「伽夜、寒くない?天気予報では1日中冷え込むって言ってたから」
「大丈夫!たくさん着込んできたから平気」
「そっか。でも風邪引かないように!おーやってる、やってる」
「あれは野球とラグビー部だね。来年に向かって頑張ってるんだろうね」
「寒いのに頑張るねえ」
グランドでは寒さを吹き飛ばすくらい大きな部活生の声。
「お。いたいた、愁―!」
昇降口の数段の階段に誰かが座っている。
明の声が聞こえたのか、その人物は立ち上がり二人に近付いてくる。
(…お、大久保くん)
そう、その人物は大久保愁であった。
「遅いっ!1時間も遅れやがって!」
「あ、ご…ごめん」
怒気を込められた声に伽夜は思わず謝る。
「伽夜は謝らなくていーよ」
「明!お前が昨日の夜に、昇降口に11時に集合って言ったろ!」
「…昨日の夜?」
「伽夜が入浴中に愁の家に行って、説明してきたんだよ。大分、遅くなって帰ってきたのは真夜中だったけど」
そう言えば、夕方にそんな約束をしていたような気がする。
(それで…お風呂上がったらいなかったんだ…)
「お前、嘘つくなよ!」
「嘘なんかついてないよ。」
「だいたい…」
回想。
明:『集合、何処にするかい?』
愁:『何処でも』
明:『なら、分かりやすく昇降口にするかな。…時間は?』
愁:『11時』
回想終了。


