うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 



 瑞季の呼吸音が変わった。

 眠ったようだな、と了弥は思う。

 もう悪い夢を見ないといいが、と思いながら、その寝顔を眺めた。

 ベッドについた自分の手にかかる瑞季の髪にそっと触れてみる。

 やわらかなそれはいい匂いがして。

 もうもんじゃ焼きの香りはしなかった。

 よしよし、と了弥は思う。

 他の男と出かけたときの匂いが残っているのは、あまり気持ちのいいものではないから。

 そのとき、瑞季が寝返りを打ち、
「ふふふふふ」
と笑い出した。

 ……なんなんだ、と思ったが、その寝顔を見ているだけで、なんだか幸せな気持ちになれた。

 だから、まあ、今はこれだけで我慢するか、と瑞季の額にそっと口づける。

 彼女を起こさないように。

「おやすみ」
と囁き、電気を消して出て行った。