うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 待て待て。

 礼を言われたのは初めてだって、貴様はいつも、そんなことを誰に言ってるんだ、と思った。

 まったく、男なんてロクなもんじゃない。

 こっちもロクなもんじゃないと割り切って、全部忘れてしまえばいいんだろうけど、と思いながら、目を閉じてみたが、やはり、眠れそうにはなかった。

 そういえば、家はどうなってるのかなあ。

 怖いから全然帰ってないけど。

 しかし、トイレットペーパーにバーカとか、神田くんがやるかな?
と思ったのだが、ビールのグラスの向こうから、にやりと笑った神田の顔を思い出し、

 ……意外とやるかも、と思った。

 なにかこう、いつも企んでそうに見えるんだよなあ。

 そんなこともないのかもしれないけど。

『びっくりした?』

 面白かったでしょ? とあの素敵な笑顔で言ってきそうだな、と思いながら寝たせいか。

 久しぶりに家に帰ったら、白い壁一面にバーカ、と書いてあって、帰国してきた、おにいちゃんにめちゃめちゃ叱られる夢を見た。

 うなされて起きると、
「まだ起きてんのか?」
とドアの向こうから声がした。